COLUMN

camera「スクール・ウォーズ」その1

『スクール・ウォーズ』Blu-rayをより楽しむため、頭の片隅に留めておきたい事柄

用田邦憲(ライター)

「テレビ映画」の雄・大映テレビが生んだ『スクール・ウォーズ』

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 1970年代後半、山口百恵・三浦友和・宇津井健らが出演して、驚異的な視聴率を稼ぎ出した『赤いシリーズ』。これを製作していたのが、「大映テレビ室」を源流に持つ「大映テレビ」である。続く80年代にも、同社は数多くの「テレビ映画」を製作。その代表的なものが『スチュワーデス物語』、『不良少女とよばれて』、そして『スクール・ウォーズ』だ。「赤いシリーズ」にせよ、80年代の作品群にせよ、ともすれば「大映ドラマ」は、その独特の演出手法などから、表面的な部分だけを捉えて「ツッコミ」の対象になったりすることがある。だが、映画会社である大映の流れを汲み、スタッフ・キャストともに映画界からの人材を登用してきたのが大映テレビだ。そのうえで、テレビというメディアにおいていかに視聴者の心を惹きつけるかに腐心してきた結果、他社にはおいそれと真似できない作風が完成した。だからこそ次々と話題作を世に送り出し、高視聴率を獲得できたのである。
 さて、そんな「大映ドラマ」の中でも『スクール・ウォーズ』は、ちょっと異色の存在だ。なぜかといえば、第1話の時点ですでに、結末が示されているのだから。実話を基にした『スクール・ウォーズ』の結末は、川浜高校の全国大会優勝。昨今の言い方をするなら、思いっきり「ネタバレ」している。しかし創り手たちは敢えて、「実話」を基にした原作に賭けた。結末がバレていても、その過程を面白く描けば良い――当時、ノリにノッていた大映テレビの製作陣の自信に溢れた声が聞こえてくるようだ。こうして『スクール・ウォーズ』は、主人公・滝沢賢治の川浜高校への着任からラグビー部の全国制覇までを、2クール・全26話の中で描き切ったのである。少なくとも「結末がわかっているから観るのをやめた」というような視聴者は、ほとんどいなかった気がする。結果よりもプロセスが大事とばかり、各話にエピソードがふんだんに盛り込まれ、観る者を決して飽きさせなかった。『赤いシリーズ』のみならず、「大映テレビ室」時代の『ザ・ガードマン』あたりから本格的に築かれていった「大映ドラマ」のノウハウが、すべて本作で活かされたと言っても過言ではないだろう。

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 キャストに目を向けても、同様のことが言える。川浜高校のライバル、相模一高の監督を演じた倉石功は『ザ・ガードマン』では最年少レギュラー。また川浜市の市会議員で、ラグビー部の後援会長を自称する内田を演じたのは『夜明けの刑事』『新・夜明けの刑事』『明日の刑事』で計5年間にわたって主役を務めた坂上二郎だ。そして『新~』と『明日の刑事』で、坂上演じる鈴木刑事の上司役を務めていたのが、マスターこと下田大三郎役の梅宮辰夫。60年代と70年代、それぞれの時代を代表する「大映ドラマ」の要だったキャストが『スクール・ウォーズ』で脇を固めていたわけである。これほど頼もしい援軍もない。

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 一方、80年代前半の「大映ドラマ」で常連となっていたメンバーも、もちろん本作に集結している。伊藤かずえ、松村雄基はその代表格。後半からは鶴見辰吾、名古屋章も顔を揃えた。要所要所に「大映ドラマ」の歴代看板俳優を配する中、主演の山下真司は本作が「大映ドラマ」初出演。それもあってか、その山下が演じる滝沢賢治の最大の理解者という役どころ(山城校長)には、かつて『赤い運命』にも出演経験があり、山下とは『太陽にほえろ!』で共演していた下川辰平がキャスティングされた。なお山下、下川のふたりは本作をきっかけに、80年代後半の「大映ドラマ」の常連となっていく。
 こうして見てくると、やはり『スクール・ウォーズ』に関しては、作品をとりまく状況やタイミングの良さというものも、ヒットの要因になったと考えられよう。とりわけキャスト面において、これだけ「適材適所」な顔ぶれを集められた点は大きい。勝利の女神は微笑むべくして微笑んだ、といったところだろうか――。

スクール・ウォーズ


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一大ブームを巻き起こした初放送から30余年。HDリマスターで鮮明に甦るあの興奮と感動。
実話をもとに作られた奇跡の物語に再び涙するー

http://schoolwars-blu-ray.com
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