COLUMN

camera「スクール・ウォーズ」その2

『スクール・ウォーズ』Blu-rayをより楽しむため、頭の片隅に留めておきたい事柄

用田邦憲(ライター)

『スクール・ウォーズ』は“スポ根”か、それとも“学園ドラマ”か?

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 東京オリンピックから万国博覧会へ――。「日本」の存在感が国際的にも大きくなってきた時代、漫画の世界を中心に「スポ根」ブームが発生した。「スポ根」とは「スポーツ」+「根性」の意。このジャンルの代表的な作品を挙げると『巨人の星』『柔道一直線』『アタックNo.1』『サインはV』『タイガーマスク』『あしたのジョー』……といったあたりになるだろう。特定のスポーツを題材に、主人公が血のにじむような特訓を経て、トップ選手へと成長していく、というのがほぼ共通のフォーマットだ。また大半の場合、主人公やライバルが会得する技は人間離れしたレベルのものだったりする。だが、その突飛なアイデアが個々の作品の人気につながったのも事実。さらに付け加えるなら、これらの作品では、主人公が「逆境から這い上がっていく」設定になっていることも多かった。
『スクール・ウォーズ』は、実話を基にしているとはいえ、こういった「スポ根」作品との共通項がいくつかあった。そもそも、オープニング・ナレーションで謳われているように「全く無名の弱体チーム」が「わずか数年で全国優勝を成し遂げた」という骨子自体、実話ベースだと聞かされていなければ「そんなこと、あり得ない」と思うのではないだろうか。それを選手たちは、根性と努力で成し遂げた。この要素だけを採り上げれば、まぎれもなく『スクール・ウォーズ』は「スポ根」作品ということになる。
 しかし先に挙げたような「スポ根」作品の場合、あくまで主役は選手側である。野球、柔道、バレーボール、プロレス、ボクシング……。もちろん指導者側にも重要なキャラが設定されるが、主人公はあくまで星飛雄馬であり、矢吹丈なのだ。それに対して、『スクール・ウォーズ』は、再びナレーション(第3話以降)から引くならば「熱血教師たちの記録」とされている。ここでの「たち」が具体的に滝沢賢治以外の誰のことを指すのかは特定しにくいが、それでも主人公はやはり賢治ということになるだろう。実際、『スクール・ウォーズ』にはいわゆる「超高校級」の、突出した選手はほとんど出てこない。敢えて挙げれば後半から登場した平山(「ミスター・ラグビー」と称された平尾誠二がモデル)がいるが、彼とて劇中では基本的に、他の部員たちと差別化されることなく、一選手として描かれていた。

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 このように、教師が主役で、顧問を務める部活の部員たちとの交流がドラマの軸となる――というと、テレビドラマのジャンルとしては「学園ドラマ」になる。このジャンルの代表作は『青春とはなんだ』(65年/ラグビー)、『これが青春だ』(66年/サッカー)、『飛び出せ!青春』(72年/サッカー)、『われら青春!』(74年/ラグビー)といったところだろうか。これらの作品は日本テレビと東宝が制作に関わっており、もし80年代もこの種の路線が続いていたら、同じく日本テレビ&東宝による『太陽にほえろ!』を卒業した後の山下真司が教師役を務める機会が巡って来ていたかもしれない。
『スクール・ウォーズ』は、人物関係図的な側面で見た場合、「スポ根」よりも「学園ドラマ」に近い。だが決定的に異なるのは、賢治が率いる川浜高校ラグビー部が全国優勝を目指したことだ。もちろん、他の作品でもしばしば「勝利」は目的とされていたが、むしろ重要なのは、その先にある「友情」であり「絆」だった。この観点から『スクール・ウォーズ』は、「学園ドラマ」の枠からも厳密には外れていたと言えるだろう。

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 では『スクール・ウォーズ』とは何なのか? ここまで読んでくださった方なら、おわかりではなかろうか。「生徒(選手)ではなく教師(指導者)を主人公にした“スポ根”」であり、また一方では「本気で全国制覇を目指す“部活”を描いた“学園ドラマ”」でもあるのだ。しかも、ベースにあるのは「実話」という揺るぎないファクター。「スポ根」と「学園ドラマ」のハイブリッドにして、さらに「実話」であることに由来するリアリティという武器までを得た『スクール・ウォーズ』は、60年代~70年代を経て、80年代に生まれるべくして生まれた名作だったと言って良い。なぜなら、どの視聴者層が観ても楽しめる「普遍性」が、最初から遺伝子に組み込まれていたのだから。

スクール・ウォーズ


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実話をもとに作られた奇跡の物語に再び涙するー

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